鈴木加成太歌集『うすがみの銀河』
<2023年6月29日>
「かりん」の鈴木加成太さんの第一歌集が出版されました。
( 角川書店 2022年11月25日発行 2,200円+税 )
坂井修一さん、東直子さん、石川美南さんが栞を書いておられます。
鈴木加成太さんのお名前を初めて目にしたのは
栞で坂井修一さんが触れておられるように
坂井さんが選者を務められた2011年の「NHK短歌」でした。
そのときの作者は高校生。
2015年には角川短歌賞を受賞なさり、
その後「かりん」に入会されました。
このたびの第1歌集を手にしたのは昨年の12月です。
少しページを繰って、
これは大事にとっておこうと思いました。
この慌ただしい年末ではなく、
ゆったりと時間を作って読みたいと思ったのです。
いいなあと思う歌集を読むと胸が高鳴ります。
『うすがみの銀河』も少し読んだだけでドキドキしました。
だからページを繰るのを躊躇しました。
1首1首に広がる詩の世界をゆっくり味わいたいから。
ページを繰ったら終わりに近づいてしまうから。
気になりつつも歌集は引き出しに大切にしまって
お正月の2日にゆっくり時間をとって読みました。
私の今年の”歌集はじめ”は『うすがみの銀河』です(=^∸^=)
好きなうたがたくさんある中から一部をご紹介いたします。
もうすぐ歌集批評会も開かれます。
(7月2日午後に、オンラインにて)
旧校舎の窓ふいに割れ、浜風は木の標本を芽吹かせゆくと
浜辺に置く椅子には死者が座るという白詰草の冠をかむりて
園丁の鋏しずくして吊られおり水界にも別の庭もつごとく
蓋に森、銅にみずうみ 鏡なすグランドピアノは少女らのもの
あきかぜのプールの底は鍵・銀貨・みなみのかんむり坐などが沈み
この町に雪は降りだす少年の描きさしの魔法陣に呼ばれて
ささやかな焚き火へ木屑足すように色鉛筆の香を削りおり
八月の空に青葉のあお満ちて 〈戦争は白黒ではない〉と気づく
自転車を漕ぐとき街は明るくてその明るさのひとつと思う
白雲のすがたを借りて象たちのたましいの群れ南へ向かう
火を盗むならば夜汽車の深部より、風は帆船の白き胸より
世界が悲を母がちひさな団栗を呉れるのだやさしい子だからと言ひて
円陣の円に入れぬ少年のわたしが統べてゐしアキアカネ
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