窓のうた-薔薇窓
3月のおくら短歌講座は見学のかたがおひとり参加なさいました。
今月のテーマで詠草も一首持ってきてくださって、嬉しかったです。
今回のテーマは「窓」。
寺院シャルトルの薔薇窓を見て死にたきはこころ虔しきためにはあらず
葛原妙子
この一首は、収録された第五歌集のタイトルにもなった「薔薇窓」という
ことばが印象的ですね。
「寺院シャルトル」は、フランスのシャルトル大聖堂のこと。
美しいステンドグラスで有名で、特にその青色はシャルトル・ブルーと呼ばれます。
「薔薇窓」とは中心より放射状に広がる格子によって薔薇の花や車輪状の
パターンをなす大きな円形の窓です。
歌集『薔薇窓』のあとがきを参考にすると、この一首が詠まれたのは
1956(昭和31)年頃。当時はフランスは現在よりもずっと遠く感じられたことでしょう。
葛原妙子は1907(明治40)年生まれです。
50歳前後の作者が見てから死にたいと詠んだ「おそるべき美しさ」(歌集あとがき)
をもつ窓を、作者は見ることができたのでしょうか。
1969(昭和44)年のヨーロッパ旅行の際に、遂にこの念願の薔薇窓を仰いだと
書き残しています。
葛原妙子がこれほどまでに惹かれた薔薇窓をもつシャルトル大聖堂は
世界遺産になっています。