「五月礼賛」
- momosaran
- 2017年5月29日
- 読了時間: 2分
五月を賛美するあでやかな詩を詠んだ与謝野晶子は
1942(昭和17)年、その五月に亡くなりました。
今日5月29日は晶子の命日です。
晶子を偲び、また、まもなく去ろうとするこの美しい月を惜しんで
きのうの短歌サロンでも朗読したこの詩を。
まったき七五のリズムでうたわれています。
五月礼賛 与謝野晶子
五月は好い月、花の月、
芽の月、香(か)の月、色の月、
ポプラ、マロニエ、プラタアヌ、
つつじ、芍薬、藤、蘇枋、
リラ、チユウリツプ、罌粟の月、
女の服のかろがろと
薄くなる月、恋の月、
巻冠に矢を背負ひ、
葵をかざす京人が
馬競べする祭り月、
巴里(パリイ)の街の少女等(おとめら)が
花の祭に美くしい
貴(あて)な女王を選ぶ月、
わたしのことを云ふならば
シベリアを行き独逸行き
君を慕うてはるばると
その巴里まで著(つ)いた月、
菖蒲(あやめ)の太刀と幟とで
去年生まれた四男目の
アウギユストをば祝ふ月、
狭い書斎の窓ごしに
明るい空と棕櫚の木が
馬来(マレエ)の島を想はせる
微風(そよかぜ)の月、青い月、
プラチナ色の雲の月、
蜜蜂の月、蝶の月、
蟻も蛾となり、金糸雀(カナリヤ)も
卵を抱(いだ)く生(うみ)の月、
何やら物に誘(そそ)られる
官能の月、肉の月、
ヴウヴレエ酒の、香料の、
踊の、楽の、歌の月、
わたしを中に万物が
堅く抱きしめ、縺れ合ひ、
呻き、くちづけ、汗をかく
太陽の月、青海の、
森の、公園(パルク)の、噴水の、
庭の、屋前(テラス)の、離亭(ちん)の月、
やれ来た、五月、麦藁で
細い薄手の硝杯(こつぷ)から
レモン水をば吸ふやうな
あまい眩暈(めまい)を投げに来た
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