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桑原正紀歌集『花西行』-詩と短歌の会

  • momosaran
  • 2017年6月26日
  • 読了時間: 2分

今月の「詩と短歌の会」は桑原正紀さんの歌集『花西行』(2016年 現代短歌社)

が取り上げられました。

参加者はあらかじめ歌集を読んできて解釈や批評を述べ、

意見交換をしました。

私が話したのは次のようなことです。

🐤死から生を照らす。

  また、元校長であり長く病院で療養中の妻の世界から自分や周りを照らす。

  それにより、生だけ、自分の日常だけが輝くのではなく、

  生と死、妻の世界と自分の世界が同じ重さ、同じかがやきとして置かれる。

🐤アスラ、インドラ、ソーマ、といった仏教用語が使われ、妻を悟りの人とも見る。

🐤温石(おんじゃく)、骨柄(こつがら)などのことばの選び方にもひかれる。

🐤大きなライフイベントとしては学校教諭を定年退職したことが詠われており、

 他にも人間の精神と職業について詠った作品に注目した。

🐤定年退職と妻の療養の他は個人的に大きなできごとは出てこないが

  日常をうたって品がある。品格を感じる歌集。

 バラの木の下にねむれる猫二匹おもへり遠き星あふぐがに     (P37)

    永遠の時間の中に還りゆきしいのちがわれをおもふ慥(たし)かに (P37)

    生が死をおもふとき死が生照らし眩しきかなや五月のひかり     (P37)

    「お帰り」といふ妻の声あかるくて甘露液(ソーマ)のごとく疲れに沁みぬ 

                                               (P21) 

    食べてゐることを忘れて呆とせる妻よ頬つぺがリスのやうだよ    (P102)

    妻といふほかなけれどもこの人を妻とし呼べば何かはみ出る     (P80)

    とむらひは儀式にあらず温石のごと亡き人を胸に抱くこと        (P75)

    寡黙にて芯つよかりし骨柄のにほふかんばせ胸ふかく蔵(しま)ふ  (P139)

    百一歳の伊藤氏はもと医者にして「先生」と呼べばうすく目をあく   (P20)

    病院で採点すればのぞきこみ「手伝おうか」と妻は言ひたり      (P103)

    学校の記憶に触るるをりをりにぱちりと目覚む妻のたましひ      (P103)

    頂きし花束の中のユリの香にむせてくしやみす 良き教師たりしか  (P178)

    炊きたての飯よそふときほのぼのと顔つつむ香を母とおもへり    (P105)

    水の上に身をひろげつつしんしんと夜ざくらはみづに恋ひわたるやも

                                               (P83)

    身を捨てておもひを遂げしやすらぎにさくら花びら水面(みなも)をうづむ

                                               (P84)


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