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岩尾淳子歌集『岸』

  • momosaran
  • 2017年7月13日
  • 読了時間: 2分

制服を着るのを忘れて来たというおおかた忘れていいことばかり

   祈ったり鶴を折ったりしないこといつかしずかなところで会おうね

   輪廻してゆく人たちが乗り合えるバスにちいさな運賃の箱

   木の床をあなたが水をはこびゆく仏壇までのしずかな歩幅

   葦分けて水ゆくように制服の列にましろき紙ゆきわたる

   春を待つこころあるいは水鳥のようにブラウスたたまれており

   血脈はさみしき川かみごもれる娘のしろいからだが眠る

   病院の前はこの世の花ざかり薬をもらいし母あかるめり

   目を細めひざしを浴びている亀をいきしなに見て帰りも見たり

   被災地へ向かうみどりの自衛隊車輛のうしろをしばらく走る

   こころには日暮れがあること柔らかな夜空を流れる雲があること

未来短歌会の岩尾淳子さんとは一度お会いしたことがあります。

2012年上梓の、岩尾さんの第一歌集『眠らない島』と

私の第二歌集『百年の祭祀(チェサ)』が

ともにその年の現代歌人集会賞の候補作となり、

12月に開催された同会の秋季大会に出席したときです。

このたびの『岸』は岩尾さんの第二歌集で

2012年から2016年までの三五四首が収められています。

印象的な歌が多く、口語の美しさを感じられる歌集です。

( 2017年6月9日発行  ながらみ書房  税別2,500円 )


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