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櫛田如堂歌集『ざうのあたま』


まるでわたしざうのあたまのやうだわと笑ひて話す妻のかなしみ

「かりん」(私が所属している短歌結社)の櫛田如堂さんの第三歌集です。

(ながらみ書房 2016年2月発行)

出版されてまもなく拝読しましたが

櫛田さんと初めて直接にご挨拶を交わせたのは

今年の「かりん」全国大会でのことでした。

2011年の東日本大震災と福島原子力発電所事故の直後からの

5年間に詠まれたうたが収録されています。

あとがきによると櫛田さんは放射線分野の研究と教育に関わっておられ、

ご本人が福島県出身、奥様が宮城県のご出身だそうです。

同年の夏にアメリカへ赴任されており、こうしたことがらに関するうたが

歌集の前半に置かれています。

後半はお母様と奥様への挽歌が中心となっています。

その中で私がもっとも心をうたれたのは奥様を詠まれた作品です。

麻酔醒めて痛みと寒気を訴へる妻に掛けやる自宅の毛布

   薔薇色の汝が唇よさやうならこれがこの世の最後の接吻

   薄れゆく意識の中でベッドから君が手を振る今生の別れ

一首目、「自宅の毛布」に奥様を包み込む作者の精いっぱいの愛情を感じます。

二首目、「この世の」としたところに、彼岸や来世にまた妻と会うのだという強い願い

を感じます。

三首目、「君」の最期の意志を感じる場面。悲しく強く美しい手。

冒頭の一首は抗癌剤の副作用を悲しむ奥様のことばであり、

歌集名ともなっています。


 
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