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帽子のうた-別れのかたち


人はむかし別れのかたちうつくしく力の限り帽子振りにき

                                小池 光

今月の「嘉麻のおくら短歌同好会」短歌講座のテーマは帽子としました。

半世紀ぐらい前まで、でしょうか、

現在よりも帽子は日常的に着用されていました。

大人の男性用も、今は使っている人をみかけても

野球帽のようなキャップが多いと思いますが

以前はパナマ帽、中折れ帽、鳥打帽などさまざまでした。

「サザエさん」のお父さんも、背広に帽子を被って出勤していますね。

その帽子を、人と別れる時は手に取って大きく振る。

それが別れを惜しむ気持ちの表現でもあったのですね。

故郷の村から都会に出る若者を送る。

駅のホームを出ていく汽車に振る。

いろいろな別れの場面が思い浮かびます。

このうたについて、作者は短歌総合誌の対談でこう語っています。

    「その歌はね、裏にあるのは、特攻隊が出撃するときの場面なんだ。

     どこにも書いていないけれど。

     みんな地上の人は帽子振ったでしょ。」

       角川「短歌」2016年5月号

       「対談 31文字の扉-詩歌句の未来を語る」小池光×大木あまり(俳人)


 
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