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小野雅敏歌集『アルゴンキン』

  • momosaran
  • 2019年3月16日
  • 読了時間: 2分

「かりん」の小野雅敏さんの第一歌集『アルゴンキン』が出版されました。

(短歌研究社 2019年2月19日発行 2,500円+税)

あとがきによると、小野さんは65歳の時に初めて短歌を作ってみたいと思い、

その半年後に短歌教室に入られたそうです。

馬場あき子先生が帯文の中で

「歌集の中にはかなり速い時間の流れがあり、物を見る眼や、素材や用語に、

経てきた人生がソフトな、だが深い襞のように蔵されている。

平明ではあるが、単純ではない。」

と評されています。

歌集名はカナダのオンタリオ州立公園の名前で

そこはアメリカアカオオカミの保護生息地に指定されています。

集中にこのような一首があります。

 狼を真似るガイドの遠吠えはアルゴンキンの湿原に消ゆ

時間や時代、場所が重層的に詠まれているうたが多く、

そこに魅力を感じました。

印象に残ったうたをご紹介いたします。

 竹の子の節の間に畳まるる未来を食めばゑぐみ広がる

 春眠へ戻りつつ聞くほととぎす我が家を高く越えて行くらし

 下陰(したかげ)に群れ立つ花の色濃ゆく地霊のごとく曼珠沙華咲く

 尾の先でトンボが触れる水たまりその裏側はアリスの国か

 あぜみちに伏せてヤンマを待ちしことわがトキメキの初めのひとつ

 熟れ過ぎし無花果の実の食感にカルタゴ国の興亡思ふ

 舗装路に散らばり光る粒を見る雲母含むか産地は何処か

 図書館に折口信夫全集を開きて午後も大正時代

 退職後半年たてど無職とふひそかな苦さ消える土日は


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