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桜蕾忌


今日は山本詞(やまもと・つぐる)の命日です。

1962(昭和37)年3月30日、坑内の炭車事故により亡くなりました。

享年32歳。

3月3日に誕生日を迎えたばかりでした。

炭鉱の歌人、山本詞が生まれたのは田川の糸田町にあった

豊国炭坑の炭住です。

その後、坑夫である父の仕事先が変わったため

住まいも転々としますが

8歳で飯塚市幸袋の古河目尾坑の炭住に落ち着き、

旧制鞍手中学校卒業後は

すぐに古河目尾坑で坑夫として働きはじめます。

(のちに技師となる)

20代に結核の療養所に入った数年間を除いては

亡くなるまでこの炭住で暮らしました。

炭車事故に遭った時、

坑内で仲間たちが、

もう少し(で坑口)だから頑張れ!と口々に励ますと

うなずいていたと言いますが

その目が坑口の外の景色を映すことはかなわず、

坑内で息を引き取ります。

まさに、

炭坑に生まれ、炭坑に生き、炭坑で終わりを迎えた命でした。

「桜蕾忌」とは、山本詞の命日のこと。

1978(昭和50)年、

かつての炭坑での文学仲間や短歌結社「形成」の歌友が

そう名づけて彼の命日に集うようになります。

「桜蕾忌」の命名の由来は

歌人としても私生活でも、さあこれから、という時に他界した、

つぼみのままでという哀悼の気持ちとともに、

桜の蕾がふくらむ頃、いうことからきていると推察します。

ところで、今年の福岡の開花日は全国で2番目に早く、

3月21日でした。

これは昨年より5日遅く、平年に比べると2日早いそうです。

今日現在、福岡市や北九州市では満開で、

飯塚市では六分咲きくらい。

近年、桜の時季が早くなっていると感じています。

仲間たちが桜蕾忌と名づけた命日は

現在、

きれいに咲いた桜のなかで迎えるようになりました。


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