西美代子歌集『ハツユキカズラ』
「かりん」の西美代子さんの第二歌集が出版されました。
( 2019年3月12日 本阿弥書店 2,700円+税 )
歌集のタイトルは次の一首より取られています。
ふっくらとハツユキカズラは枝垂らす母に贈りて五年たちたり
第一歌集から約25年ぶりの上梓だということです。
その年月に、実のご両親と伴侶のご両親を看取られ、
身近にいらした大切な歌友を亡くされたそうです。
そして、子どもさんを詠んだうたの数々も
幼い頃の遊びのうたと成人式を迎えた日のうたがともに収録されています。
広島に住むかたとして原爆のことを詠んだうた、
職場のうた、各地への旅のうたなど、
25年の歳月を感じる歌集です。
馬場あき子先生が帯文を書かれていますのでご紹介いたします。
「著者のうら若い日の歌集『恐竜のたまご』から四半世紀がたった。
奇想をまじえた新鮮なアイディアのある歌が刺激的だったのも
ついきのうのことだ。
その後近親の方々のお世話が次々に必要となり、
西さんは長く苦しい時間によく耐えた。
この歌集はその証である。
ここにはその日常と向きあう静かな端やかな言葉が
新しい息吹をみせている。
新生を希う意欲に、私のよろこびを添えて期待を寄せている。」
拝読して印象に残ったうた六首を記します。
男性の名ばかり並ぶ移住者名簿アイヌの女の宛てがわれしとう
(「旧土人保護法」)
母一人にほほえみかけてゆっくりとその翌朝に父は死にたり
(「小さき足跡」)
孫のネームの体操服着てわが母が病院ではじめて迎える新年
(「移る病院」)
母の着しスーツやワンピース三十着古着屋で売る七十円で
(「一分前まで」)
母は掌をさすれば気持ちいいと言う呼吸のとまる一分前まで
問いかけに苦しくないと微笑みつつ母は逝きたり雨あがる夜明け