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近藤けい子歌集『再生』

  • momosaran
  • 2019年6月27日
  • 読了時間: 2分

「かりん」の近藤けい子さんの第一歌集が出版されました。

(本阿弥書店 2019年6月15日発行 2,700円+税)

近藤さんはあとがきの冒頭に

「学生時代、土岐善麿先生に、先生ご自身や石川啄木についての

お話を伺い、漠然と短歌に憧れを抱くようになっていました。」

と記していらっしゃいます。

「かりん」の佐波洋子さんが解説を、

そして馬場あき子先生が帯文を執筆してありますが

馬場先生も近藤さんと土岐善麿のことについてふれていらっしゃいます。

「学生時代に、教授としての土岐善麿に出会ったことが、

 短歌を作りはじめる火種として残っていたということに

 並々ならぬ歌のえにしを感じる。

 四人の子供を育て終えたのち、

 日常に出会った事物すべてを歌にすることでたちまち歌にのめりこみ、

 東日本大震災をみつめることにより『再生』の表題も得た。

 歌もこの辺から大きく成長した。

 本来の情熱的性格が、歌う情熱となり、意欲的な力が生れている。

 馬場あき子」

近藤さん、第一歌集ご上梓、おめでとう存じます。

『再生』より、印象に残ったうたをご紹介いたします。

真夜醒めてカーテン越しの朧月ふるさとはいま神迎え祭

売れ残りの西瓜は赤く破裂して無人直売所は日の暮れるなり

アッ!惜しいと息子は笑ふ吾の手相覇王となるに一センチ足りず

薬指飾るものなき左手を凝視されをり同窓会に

一人旅終へたる息子のトランクにインドネシアの碧き香水瓶

一首目。

近藤さんは島根県出雲のご出身。

「神無月」ということばが残るように

秋に日本全国から神々が集うという故郷への思慕と矜持を感じます。

二首目。

近年とみに激しくなった真夏の暑さ、その猛烈な日射し。

三首目。

「覇王」が効いています。

たった一センチ、その一センチによって隔てられたもうひとつの世界。

四首目。

凝視しているのは同性でしょうか。

同窓会でそれぞれの人生に思いをめぐらす、シビアな一場面。

五首目。

息子さんがインドネシアで買ってきた美しい瓶に入った香水は

作者へのお土産なのでしょうか。

そうではないとしたら

心に一人のひとを思いながら旅の日を過ごしたのか。

香水瓶をみつけた時の母親の心情を思います。

香水瓶の碧はインドネシアの海も連想させます。


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