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芥川賞と福岡の出版社


このほど「むらさきのスカートの女」で芥川賞を受賞した今村夏子さん。

7月18日付朝日新聞「ひと」欄に登場なさっています。

・・・・これより引用・・・・

(前略)デビューは鮮烈だった。

小説を書き始めたのは29歳と遅かったが、

2010年にホテルの客室清掃員アルバイトをしながら、

初めて最後まで書いたという小説で太宰治賞。

その作品を収めた初めての単行本が三島由紀夫賞に輝いた。

 だが華々しい評価がプレッシャーとなった。

書くことが何もなくなり、5年余り沈黙した。

「もうやめてしまおうと決めた」と振り返るほどの時期を乗り越えて、

16年に発表した「あひる」で初めて芥川賞の候補に。 

アヒルの「のりたま」を飼うことになった一家の日常を描いた短編で、

表舞台に戻ってきた。(後略)

・・・・引用ここまで・・・・

こちらの記事では触れられていませんが

この短編「あひる」が掲載されたのが

「たべるのがおそい」創刊号でした。

「たべるのがおそい」は

2016年に福岡の出版社・書肆侃々房が創刊した文学ムックです。

出版不況が叫ばれる中で、

ムック形式とはいえ新しい文学誌を発行する。

そして、小説・翻訳・短歌と、これまでの純文学誌とは異なる内容。

しかもそれが、福岡という地方の出版社から創刊される!

新鮮な驚きでした。

誌と短歌の会などでごいっしょしている田島安江さん(書肆侃々房代表)にも

そのことをお伝えしたことがありました。

その上、創刊号に掲載された今村夏子さんの「あひる」が

芥川賞候補になって、

なんだか親戚に慶びごとがあったような気持ちで、

その時の芥川賞発表をドキドキしながら待ったものです。

この、地方の出版社が文学ムックを創刊、そこから芥川賞候補が出た

ということは注目を集め、

その年の年末の朝日新聞西部本社の

一年を回顧する特集記事の<文化>分野の中で

大きく取り上げられていたのを覚えています。

でも、代表の田島さんは淡々としてありました。

特に、驚きと称賛をこめて「地方の出版社が・・・」と話を向けられると

今の時代は地方ということはあまり関係ないとおっしゃっていました。 

2016年に創刊した「たべるのがおそい」は

この春に第7号をもって終刊しました。

創刊に驚かされたように、

終刊のお知らせにも驚きましたが

この「終わり」はまた何かの「はじまり」なのではないかとも感じました。

そうしたところ、今月に入って

来年春に新しい文学ムックを創刊することが発表されました。

ついては、創刊号に掲載するための小説を募集する、と。

「たべるのがおそい」(創刊号~第7号)に掲載された小説には

今村さんの「あひる」の他にも芥川賞候補になった作品があります。

書肆侃々房が来春創刊する新しい文学ムックから

第二、第三の今村夏子さんが生まれるかもしれません。


 
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