決定!第21回かりん力作賞
「かりん」9月号では
第39回かりん賞と並んで第21回かりん力作賞が発表されました。
かりん力作賞もかりん賞と同じく
直近1年間の「かりん」誌掲載の自作より再構成して
三十首の作品として応募する、結社内の賞です。
今年の応募総数は64編で過去最多だったそうです。
その中で受賞なさったのは
「海賊の島」の檜垣実生さんと、
「わたつみの雲の夕焼け」の刀根卓代さんです。
おめでとう存じます。
おふたかたとも九州にゆかりのあるかたです。
檜垣さんは大分市在住。
刀根さんは福岡県出身です。
しかも、刀根さんの故郷は私の住まいからさほど離れていません。
そして、おふたりとも現在1A欄に所属していらっしゃいます。
(「かりん」誌にはⅠ~Ⅲ欄と本欄<馬場欄・坂井欄>があります)
私が前月号作品鑑賞の執筆者の一人であることから(担当は1A欄)
その中でおふたかたの作品を複数回取り上げたことがあるので
そのいずれかが今回の受賞作品三十首に入れられているか確認したところ
どちらの作品にも入っていたので
なんだか嬉しい気持ちです。
それは、次のうたです。
「海賊の島」より 檜垣実生
月夜には魚になりて泳ぐらし恋人がいる島のイノシシ
「わたつみの雲の夕焼け」 刀根卓代
歳末のオアフの墓地に碑を磨く日系人あり刻字読めざる
お祝いの気持ちをこめまして
「かりん」誌の前月号作品鑑賞で上記の各一首について書いた箇所を
ご紹介いたします。
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「かりん」2018年8月号
前月号作品鑑賞(1A欄) キム・英子・ヨンジャ
月夜には魚になりて泳ぐらし恋人がいる島のイノシシ
檜垣実生
対馬では鹿が湾内を泳いで渡ると聞いていたが、イノシシも泳ぐとは。
本来は水を嫌って泳ぐことはないが、
追い立てられるなどのやむを得ない場合は泳ぐこともあるという。
やむにやまれぬ理由とは恋の相手に会うためだと詠んで、
民話のような物語性のある一首となった。
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「かりん」2019年4月号
前月号作品鑑賞(1A欄) キム・英子・ヨンジャ
歳末のオアフの墓地に碑を磨く日系人あり刻字読めざる
刀根卓代
刀根作品は1868(明治元)年に最初の移民が出発して以来
150年の歴史を持ち、
ハワイの地に根をおろして生きる日系人社会のことを詠む。
四世、五世と代を継いでいけば、
英語を母語とする彼らに
日本語、特に文字が理解できなくなるのは自然な流れだろう。
日本語を読めないままルーツを尊重するのは不思議なことではない。
彼らが大切にしているのは、一世や二世、三世たちが
ハワイで築いてきた日系人社会の歴史、
そして家族の歴史なのだろう。
結句の連体形に、そのことへの作者のまなざしを感じる。
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