いざ みづからを
9月に入ってから35度前後の猛暑がぶり返し、
なかなか体にこたえたことでした。
それでも空の雲は秋を感じさせ、
上旬には田んぼの脇道に曼殊沙華が顔を出しました。
そして、日中は残暑が厳しいとはいえ
朝夕の風にようやく涼しさを覚えるようになりました。
新涼の季節、心に浮かんでくるうたがあります。
眼をあげよもの思ふなかれ秋ぞ立ついざみづからを新しくせよ
若山牧水
私に喝を入れてくれるような一首です。
「秋ぞ立つ」を暦の上での立秋ととれば
このうたは8月の上旬頃に詠まれたことになります。
このうたに出会ったのは、たぶん20代の頃。
その頃は暦の立秋のことと解釈したように思います。
だから、8月前半の、
一年でもっとも暑さの厳しい季節に思い出していました。
その気持ちを言葉にしてみると
たたみかけるような呼びかけが
真夏の暑さの激しさと響き合うように感じていたのでしょう。
それがだんだん、
暦の上の立秋とは関係なく、
自分自身の感覚で秋を感じた時に思い出すようになりました。
実際、この一首が宮崎日日新聞に掲載されたのが9月10日だったそうですから
だいたいいまごろの季節ですね。
一首の中で何度も命令形で呼びかけていますけれど
これは他者に対してではなく
牧水が自分自身に呼びかけているのでしょう。
そして、このうたを読んだ私も
そうだ!
と自らを鼓舞してきたのです。