top of page

江國梓歌集『桜の庭に猫をあつめて』

  • momosaran
  • 2019年10月23日
  • 読了時間: 2分

「かりん」の江國梓さんの第二歌集が上梓されました。

(角川書店 2019年7月25日発行 2000円+税)

歌集名はこの一首よりとられています。

 いつの日か我が家も空き家となるのだらう桜の庭に猫をあつめて

こちら以外にも折々に猫が詠まれているこちらの歌集の帯文は

馬場あき子先生が書いておられますので、ご紹介いたします。

「才気の人、江國梓さんの根底には、

 新知識や事物への飽くなき探求心がある。

 だからその視野も歌材も多面的だ。

 この歌集は何と中年にして新しくみつけた大人の恋からはじまり、

 双方の家族ぐるみで結婚するというドラマが、

 俗ともならずいきいきと展開する。

 くらしの中に珍しい虫や生物が彩りを添えているのは、

 新夫妻の趣味の世界か。

 いまも面白く、これからも楽しみだ。」

次に、拝読して印象的だったおうたを挙げます。

 金銭を食べ続けねば果ててしまふカネゴンけふも泣きながら食ぶ

 延命の水を吸わせし薔薇いちりん触れれば煙りのやうに散りたり

 間歇泉のごとく吹き上ぐる悋気あり生前のあなたの歌集を閉じる

 恋のため神父を辞めし人のこと震へるやうに聴く午後の聖堂

 水入らずの水なることを思ふときそつと抜け出し揚げる春巻き

 夏くれば裏磐梯へ帰るだらう人のなき世もアサギマダラは

 亡き先妻呼び出す電話たまにあり「もうゐません」と棒読みにいふ

 小さきころ魔法と思ひし母の手を祈るかたちに組んでやりたり

 越冬の天道虫と遊びをりベトナムで消息絶えたる友よ

ここに挙げた中では、

虫の歌は六首目のアサギマダラと九首目の天道虫の二首ですが

歌集にはさまざまな虫が登場して

しかもそれは自然の中で観察するものだけではなく

馬場先生が帯文に書かれているように

どうやらおうちのなかでの楽しみであるらしく

それが一つの特徴となっています。 

五首目(「水入らずの...」)は

かりん誌で拝読した記憶があります。

その時から印象に残っていました。

七首目(「亡き先妻...」)は、「棒読み」がポイントでしょうね。

感情を入れずに棒読みのように答えるのは

そうしなければ感情が波立ってしまうからでしょうか。

八首目(「小さき頃…」)のお母さまへの挽歌も

かりん誌で拝読して胸に残りました。

担当している「前月号作品鑑賞」で取り上げたので

特に記憶に残っている一首です。


最新記事

すべて表示
「かりん」12月号-どんな人間

今月の「かりん」は8日に届きました。 (8日といえば、私が寝込んでしまった日ですね・・・) 今月号では私は前月号作品鑑賞(1A欄)を執筆しました。 それから、例年「かりん」の12月号には年間展望が掲載されます。 今回は、「山花集」の年間展望(執筆:畑彩子さん)で...

 
 
 
第33回いいづか短歌サロン-銀杏のうた

今月(第33回)のいいづか短歌サロン(紙上開催)は10日付で発行しました。 先月、8か月ぶりに会場で開催した折に見学に来られたかたがいらしたのですが そのかたが今回、初めてご参加になりました。 嬉しいことです♪ ご参加人数も紙上開催の回ではこれまでで最も多くなりました。...

 
 
 
「短歌は武器になる」

購読している新聞(朝日です)には土曜日に別刷りの「be」が付きます。 その大きな写真付きの1面は「フロントランナー」。 さまざまな分野で活躍しているかたへのインタビュー記事です。 1面の記事は3面にも続きます。 今週の「フロントランナー」は歌人の穂村弘さんでした。...

 
 
 

Comments


最新記事
アーカイブ

© 2016 by kotonohasha

当サイトの文章・画像などの無断転載を禁止いたします。

 

bottom of page