帽子の中に秘密があるうた
媼(おうな)。
老婦人。
老女。
親族以外の、つながりが薄かったり、まったく見知らぬ人である場合の、
年齢の高い女性を表すことばはいくつもありますね。
近年心ひかれたうたの中に
そういう女性を「おばあさん」と呼んでいるうたが何首かあります。
本日の「気分が明るくなったうた」は、そのうちの一首です。
おばあさん帽子を被る人多し鳴かぬ小鳥を隠しいるらむ
遠藤由季
私と同じ「かりん」の遠藤由季さんの歌集『鳥語の文法』(2017年)より。
このうたは、上の句で説明をして、下の句で空想しています。
確かに、年齢が上がるにつれて女性は帽子をかぶる人が多くなるかも。
それは、日射しよけであったり、防寒のためでしょう。
または、もともと帽子が好きなかたもいらっしゃるかもしれません。
そういえば私の亡くなった母も、
70代頃から、
姉が編んだ毛糸の帽子を冬はうちの中でもかぶっていました。
そうすると暖かさが全然違うんだと言っていたのを思い出します。
または、女性としてのデリケートな心理で
白いものが増えてきた髪を隠したいという場合もあるようです。
そのように、帽子を被るのは
おしゃれとして、
あるいは合理的な理由があるから。
と、私などは思いこんでいたことを
このうたを読んで気づきました。
この歌の中の<われ>は、
おばあさんが帽子を被るのは
その中に小鳥を隠しているからだろう、
と想像しています。
結句を「隠せるごとく」ではなく
「隠しいるらむ」(隠しているのだろう)
としたところが楽しいですね。
もっとも、楽しい空想のうたというのは
あくまでも私の読み(鑑賞)であって、
私の主宰する「いいづか短歌サロン」でこの一首をご紹介した折は
さまざまな読みをするかたがあって盛り上がりました(=^∸^=)