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夏みかんの中から呼ばれるうた

これまで、出講先や、主宰する短歌サロンで

たくさんの歌人の作品をご紹介して、ともに鑑賞してきました。

その中で、作品をご紹介することが最も多いのは

高野公彦さんと小島ゆかりさんです。

これは何か意図しているわけではなく

ある時気がついたら・・・ということなのです。

たまたまですが、高野さんと小島さんは、ともに「コスモス」のかたですね。

本日は、その小島ゆかりさんの一首をご紹介します。

 夏みかんの中に小さき祖母が居て涼しいからここへおいでと言へり

 小島ゆかり

詠われている「祖母」は、亡くなっているのかもしれません。

下の句の「祖母」のことばからは

かつて夏に縁側かどこかで祖母がうちわを片手に

幼い<われ>を呼んでいたような場面が想像されます。

この一首を読んで、私は「橘中の仙」ということばを思い起こしました。

中国の故事で、

橘の実を割ると中で仙人が碁を打って遊んでいたことから、

碁を楽しむ老人のことをこう言うのだそうです。

もしかしたらこのことばが下敷きになっているのでしょうか。

ともあれ、

この一首には祖母があの世で楽しく暮らしているイメージがあります。

ふしぎなうたであり、

同時に何か明るい安らぎを感じるうたでもあります。

 
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