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ヘビーヴァース~人間を差し出す歌~

角川『短歌』2019年5月号は

「ヘビーヴァース~人間を差し出す歌」を特集しました。

ヘビーヴァースという単語は聞きなれませんが

ライトヴァースと呼ばれた短歌に対して

作者の生き方が反映されたうたという意味で

提案されたことばのようです。

歌人の小池光さんはこの特集のエッセイの中で

「『ライト』か『ヘビー』かというとき、

核心にあるのは人生における『苦』のあるなしであろう。」

と書いています。

副題の人間をさしだすというフレーズは

「かりん」の馬場あき子先生につながっているものなので

地元の書店で注文して取り寄せたものです。

なのに、その時はじゅうぶんに読みませんでした。

購入した頃は母の体調が悪化していて

その後すぐにのっぴきならない状態になり

8月に亡くなったので。

1年以上たって今回じっくり読んでみると

この特集だけでなくこの号全体がとても充実したものでした。

なにしろ、全254ページのほぼすべてのページを読みましたから(=^∸^=)

その中心をなすこの特集では

高野公彦さん・大下一真さん・栗木京子さんが

「人間・命・短歌」と題された鼎談をなさっています。

18ページにわたって収録された鼎談の終わりに

大下さんは

「やっぱり人生をどう生きているか、

どういう思いで生きているかが歌に反映してくるわけだから、

自分の人生をきちっと見つめていかないといけないだろう。」

と述べておられます。

栗木さんは

「自分の思いを愚直に表すことを怖れない方がいいと思うんです。

いまは、自分の歌が他者にどう読まれるかを意識して

細かくレトリックに工夫を凝らしたり微調整するという傾向になりがちですけど

伝わるか伝わらないかという前に

これだけは言っておきたいという思いが立ち上がってくる歌が

もっと大切にされた方がいい。

身の周りのちょっとしたことを歌っても、

そこに伝えたい思いがあれば、

人間とか命はテーマになり得るという気がしています。」

とおっしゃり、

高野さんの

「栗木さんが仰ったように

本当に自分が思っていることを何らかの形で表現している歌が一番いい歌で、

一番生命力があるのは、その人の本当の気持ちが出てきた歌。」

というお話が載っています。

どのかたのおことばにも

勇気を与えられました。

 
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