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松本千恵乃歌集『蝶の声』

「未来」の松本千恵乃さん(福岡市在住)の第一歌集が出版されました。

(角川文化振興財団 2020年8月23日発行 2,600円+税)

栞文を藤原龍一郎さん、今野寿美さん、恒成美代子さんが書いておられます。

作品の並びは編年体ではなく、テーマごとに分けて

下記のように構成されています。

Ⅰ  人

Ⅱ  われら生きもの

Ⅲ  生きる

Ⅳ  旅

タイトルの『蝶の声』ですが

集中に次の一首があります。

 みずからの声はもたない蝶なれど世界で起きた事実(こと)を教えて

このうたが示すように

松本千恵乃さんは世界各地でのできごとやそこに生きる人々、

そして身のまわりの小さな生きものや生活にも

いきいきとした好奇心をもって

それを詠ってこられたように感じました。

初めてお会いしたのは

たしか2018年。

「第1回福岡短歌フェスタ」の懇親会の席だったと思います。

それから、

いくつもの短歌大会や新聞歌壇で入選を重ねられていることを知りました。

その後も、福岡県内でのさまざまな短歌イベントでごいっしょになり

そのたびに明るくお声をかけてくださいました。

現在のコロナ禍で

2月下旬以降の短歌イベントは軒並み中止となり

今年はお目にかかれる機会は持てていませんが

こうして第一歌集を上梓なさったことを

心よりお祝い申し上げます。

 こののちは緒方貞子のいない日々乾いた月が山から昇る

 夕立に最後の置き傘ゆずりくれ首をちぢめて青年走る

 未明からおにぎり百個まず握り床拭く母よ引越しの朝

 隠し事あればあるほど優しかりきのうもきょうも君は優しい

 
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