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眠りのうた-無性に欲しき

  • momosaran
  • 2017年10月20日
  • 読了時間: 2分

ゆうべは嘉麻のおくら短歌同好会の短歌講座でした。

先月は「嘉麻のおくら短歌コンクール」の準備のため短歌講座はなかったので

2か月ぶりになります。

テーマは眠りのうた。

熱帯夜のつづく真夏も去り、気持ちよく眠れる季節になりました。

ゆうべの講座で取り上げたうたの中から次の一首をご紹介いたします。

   雪降れば雪の童話に眠りゆく吾の子が無性に欲しき夜があり

                            山本 詞(やまもと つぐる)

山本詞(1930~1962)は 戦後、炭坑歌人と呼ばれた人々の代表的存在です。

結核療養所で過ごした数年を除いて、終生を筑豊で過ごしました。

田川の炭住に生まれ、旧制鞍手中学校を卒業後、

家計を助けるために父の働く古河目尾抗で坑夫になりました。

32歳の誕生日を迎えてまもなく、坑内での炭車事故により命を落としました。

彼には結婚を約束していた6年越しの恋人がいたのです。

結核の療養所で知り合った、同じ年の女性です。

山本詞は回復して職場復帰しましたが

恋人は病状が思わしくなく、田川の自宅に戻りはしますが

医師からは結婚は無理だと言われたようで

周囲からも反対の声があったようです。

そうした状況に 二人の将来に対してともすればくじけそうになる恋人に

彼は時には慰め、時には励まして

結婚への強い意志を示し続けました。

けれど、このうたを読むと、そんな彼も心揺れる夜があったのではないか。

「二人の子」ではなく「吾の子」であるところや

「無性に」というところにそれを感じるのです。


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