目の水(「かりん」35周年記念特集号)
「かりん」35周年記念特集号(2013年5月号)では特集が二つ組まれ、
ひとつが十五首競詠、もうひとつがかりん歌人論でした。
十五首競詠では私も19人のうちのひとりとして参加しています。
十五首連作のタイトルは「目の水」。
きのうのブログに書いたように、
2012年に初めて東京の新大久保を訪れたことから生まれたうたも含まれています。
それらのうたを中心に、十五首から十首ご紹介いたします。
小ささに虚を衝かれたる駅出ればおみなのかたまり在りてかしまし
小春日和の新大久保駅ポケットに手を入れ左へ行く男あり
左へと曲がれば静かな横丁に看板鮮やかハラルフードの
狭き道に袖ふれあうはセーラームーンひげ濃き人は青き化粧す
「特別に」(トゥッピョリ)ときらめく包みに替えくるる姉への土産と母国語(ウリマル)話せば
おみならの美しゆかしとぞ憧るる韓国(からくに)の言葉よ涙は目の水(ヌンムル)
バラの木にバラの花咲く世に咲いてさびしからずや青き薔薇(ブルーローズ)は
記念写真撮られておりぬ在日のわれの初めて票入るるとき
権利とか義務だとか言うそんなんはさておき滲むこれは目の水
ハングルを読めぬがゆえに投票を諦めし人多かりしと聞く
キム・英子・ヨンジャ 十五首連作「目の水」より